479人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはようございます!」
部屋を出て、旅館を出るとジュンスが待っていました。
爽やかな挨拶です。
「おはようございます。」
私は軽く頭を下げてそのまま一人で歩き出しました。
「どこ行くんですか?」
「別に、どこも・・・。」
「行き当たりばったりってやつですか?」
「ええ、まあ。」
「じゃあ、僕も行き当たりばったりで。」
ジュンスは私と並び一緒に歩きました。
近所では観光できる所がない場所というだけあって、どこに行くかも考えていませんが、私は何も考えず小さな街を歩きまわる事にしました。
観光客が少ない場所をあえて選んだのです。
舗装されていないデコボコの道をゆっくり歩きながら畑や田んぼを見渡しました。
天気もよくて空を見上げると眩しいです。
私は時たま足を止めて、持ってきたデジカメをカバンから出して風景を撮りました。
緑がいっぱいの自然、遠くに見える山、スモークのない空。
見ているだけで癒されます。
「気持ちいいですね!」
ジュンスは静かになる事がありませんでした。
私の横でずっと話していたのです。
「よく話す人なんですね。」
デジカメをカバンにしまいなら言いました。
「僕ですか?そうでもないですよ。」
「どう見ても口数が多い人に見えますけど。」
「僕、カリスマですから。」
「は?意味が分かりません。」
「そのうち分かります。」
垂れ目にまた力が入ります。
「自分の写真は撮らないですか?」
「自分の写真には興味ないです。」
「じゃあ、僕の写真撮りますか?いい思い出になりますよ。」
「それはどうでしょうね。」
私は張り切るジュンスをよそにまた歩き出しました。
慌ててジュンスが追いかけてきます。
しばらく歩くと、葉っぱがいっぱいの畑が目に入りました。
そこにはおじいさんとおばあさんが畑作業をしていました。
何かを収穫していました。
「こんにちは!」
私は大きな声で挨拶をしました。
「こんにちは。」
おばあさんが腰を上げ、私達2人を見て挨拶を返してくれました。
「何を採ってるんですか?」
「ナスだよ。ちょうどいい頃だからね。」
「秋茄子?」
「そうそう。」
最初のコメントを投稿しよう!