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15秒間のCMが終わっても画面から目を離す事無く見とれていました。
色々な事が頭をよぎります。
ジュンスが言っていた言葉の数々。
有名人とか、歌手とか、グループで活動しているとか、カリスマだとか・・・。
本人の口からグループの名前を聞くことがなかったので全く分かりませんでしたが、グループの名前だけは聞いた事があるのです。今すごい人気だという事だけは耳にした事があるので。
その中の一人があの人だとは・・・。
だからって私の何かが変わるわけではない。
気を取り直しました。
首を横に振って我に戻り、腕時計を見ました。
時計は約束の時間からすでに10分以上過ぎていました。
あのグループの一員ならこんな時間に来るわけないと改めて思いました。
どれだけ人気でどれだけ忙しいのか分かりませんが、きっと寝る暇もないに違いないと思い、一人で苦笑いを浮かべながらその場を離れる事にしました。
約束をドタキャンされた事は少し腹立ちますが、彼がどういう人だったか知る事が出来ただけでもいいと思ったのです。
一歩二歩歩き始めると少し離れたところから悲鳴のようなざわめきが聞こえました。
気になってそこに視線を移すとすごい人だかりでした。
どんどん人が集まっていきます。
「ジュンスだって!」
「マジで?どこ?」
「あそこだよ!」
「見に行こうよ!」
私の後ろから若い女の子達が興奮しながら走って私を追い越して行きます。
「ジュン・・・ス?」
はっと思い、私も人だかりに向かってみました。
ただでさえ人の多い場所なのに、さらに人が集まって誰が誰なのだか分からない状態になっています。
近づいても様子が全く見えません。
分かるのは一人の男が若い女の子に囲まれサインや握手を求められていて、身動きが取れなくなっている事だけ。
確かめたくて背筋を伸ばして囲まれている人を何とか目で追いました。
たくさんの人に囲まれていて動きを邪魔されていて、でも何とか動こうとする若い男。
人だかりの中をわってどんどん入り込んで行きました。何度も背筋を伸ばしてやっと私の目が捕らえた先には一人の男。そう、旅行で一緒だったジュンスでした。
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