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困った表情を浮かべながらも自分のサインや握手を求められている状況にかなり満足している様子でした。
「は~っ。」
私はため息をつきながら体の向きを変えて人だかりから抜け出ました。
「バカじゃないの。」
私はひとり言を呟きながらその
まま駅に向かって歩き始めました。
自分がどれだけ人気なのか分かっていながらこんなに人が多い場所を待ち合わせにするなんて本当にバカだと思いました。
これじゃ、仮に会えたとしても何一つ出来ません。
会って何がしたいのか全く理解出来ません。
何故か怒りが込み上げてきました。
情けないという意味のため息をつき、何度も首を横に振りながら駅にたどり着きました。一度は様子が振り返ったものの、やはりくだらなくて電車に乗って自宅の最寄り駅に帰ってきました。
電車に乗っている間もくだらなくてイラつきが治まりませんでした。
仕事の疲れとさっきの出来事の疲れがダブルでのしかかってきて、自然と歩くペースが遅くなっています。
今日の事はただのストレスになってしまって、自分のためにもよくない。
だから忘れようと自分に言い聞かせながら家路をゆっくり歩きました。
もう少しで家に着く所でバッグの中から振動が伝わりました。
バッグを開くとマナーモードになっている携帯が光を放ちながら震えています。
携帯をバッグから取り出してサブディスプレーを見ました。
映し出されているのはジュンスの名前です。
出るか、出ないか・・・。
一瞬迷いましたが、今日の事を一言言ってやりたくて私は通話ボタンを押して携帯を耳に当てました。
「はい。」
「お久しぶりです!」
かん高いハスキーな声が聞こえてきました。
「のん気ですね。」
「そうですか?あ、今どこですか?」
「家の近くです。」
「え?どうしてですか?」
「どうして?約束の時間に来ないくせにその言い方はないでしょう?」
のん気な話し方に怒りが爆発寸前になりました。
「ちょっと、囲まれてて・・・。」
「へ~、でしょうね。」
「あ、気付いていました?」
「気付くも何も、かなりの騒動でしたね。」
「僕もびっくりしました。いや~、あそこまで人に囲まれるのは久しぶりで。」
ムッとくるのん気でかん高い声。
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