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バッグからハンカチやティッシュを取り出して拭き取りました。
何も出来ないジュンスはあたふ
たしています。
「すみません、すみません。」
ひたすら謝るばかりです。
「もういいです。」
「また怒りました?」
「怒ってません。私もしっかり持ってなかったんだし。」
「スカートが・・・。」
「クリーニングに出せばいいからいいですよ。このまま電車に乗ると臭くて迷惑だろうからタクシーで帰ればいいだろうし。」
「タクシー代払います!クリーニング代も払います!」
「それくらいありますから。」
私は拭き終えてジュンスの隣に座りました。
そして横に置いた半分こぼれてしまっている缶ビールを手にとって、一気に飲み干しました。
2人で缶ビールを2本くらい飲み干し、だんだんいい気分になってきました。
会話は長く続くことはありませんでしたが、ビールのお陰で2人のテンションは少し上がっていき、会話がはずむようになりました。
「○○さんの仕事はどういう仕事ですか?」
「聞いてどうするんですか?」
「聞きたいからですよ。」
「開発の仕事です。」
「開発?」
「商品のプランとかね。」
「へ~。カッコいいですね。」
「お陰さまで忙しくて一日の中で寝る時間が唯一の自分の時間なんです。」
「疲れますね。」
「まあ・・・。目標を達成した時はやりがいがあるけど、私から仕事をとると何も残らないんです。」
苦笑いをしながら川をボーっと眺めました。
「自分の時間を持つ事は大切ですよ。僕も人の事言えませんけど。」
「ジュンスさんはどうしてあの世界に?」
「歌が好きだからです。歌う事がとにかく好きだから。人の前で歌う事が気持ちいいんです。大きなライブ会場で自分の歌声で満たされているあの空間がすごく好きなんです。ファンのみんなが僕の声に耳を傾けてくれて聴いてくれる。幸せです。歌があればそれでいいと思ってます。」
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