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居眠りしたあげく、携帯まで落としていた事を見られるなんて、一日で2回も恥をかくのはかなり気が引けました。
「電話切ったら渡しますよ?」
「あ、待って!」
「はい?」
「すみませんけど、そのままそこにいて下さい。今から駅に行きますから。」
「今からですか?」
「はい。」
「どんな服着てます?」
「ジーパンに、白のシャツですけど。」
「分かりました。今からすぐ行きますから絶対いて下さい!」
「あ~、はい。」
私は電話を切って、フロントの係員にタクシーを呼んでもらいました。
一度部屋に戻って財布を持って呼んでくれたタクシーで駅に向かいました。
行きと同じく10分ほどでタクシーは駅に着きました。
慌てながらタクシーから降りて、駅の周りを探しました。
田舎の駅のお陰かさほど人はいなく、さっき話していた男の人はすぐに分かりました。
言っていた通りジーパンに白のシャツを着ていました。普通の服装とはいえ、このあたりでは目立つに違いない。しかも若そうな雰囲気です。
遠くで見る限り、細長い人。
恐る恐るゆっくりその人に近づきました。
髪の毛はきれいにセットされていて、落ち着いた色でした。触ってみたくなるようなさらさら感も伝わりました。
様子を伺いながら近づいて、
「あの・・・。」
男の人の後ろから小さな声で話をかけました。
「はい?」
電話と同じく少しかん高いハスキーな声でした。
私の声に振り向いた男の人はかわいい表情をしていました。一重だけど、少し垂れ目で、優しそうな目つきです。
「さっき、携帯拾ってくれた人ですか?」
「あ~、僕です!」
明るい返事でした。
「携帯。」
「これですか?」
左手を差し出されました。
その手には私の携帯がありました。
「これだ~。よかった。」
すぐに携帯を手にとって確かめました。
ずっと手で持っていたのか携帯が少し暖かいです。
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