10人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
――今になって思い出すのは、ちょうど1年前の入学式――
「ちょっと玲菜! なんであんたがこの学校にいるわけ!?」
「それは私のセリフですわ、愛流。あなたのその下品な格好を見ていると気分が悪くなるんです」
「なっ! なんですって!?」
下品と言われた少女の名は、天見愛流。茶色のショートヘアの頭頂がピンと跳ねたおかしな髪型に、入学式とは思えない服装。
もう一方の少女の名は、上之宮玲菜。金色の長く美しい髪に、一目でお嬢様だとわかるドレスを着ていた。
二人は正反対の気質からか、仲がとても悪かった。
何故か小学校・中学校と共に同じで、やっと離れられたと思った二人だったが、まさかの入学したのが同じ女子高。
さらには、記念すべき入学式の席まで目と鼻の先ときたものだ。
いがみ合いたくもなる。
「ねぇ……けんかは止めなよ」
それを止めたのは、二人の間に座っていた人物。
黒髪で、大人しそうな顔。きっと勇気を出して止めたのだろう。
「あ……ゴメン」
「……失礼しましたわ」
挟まれた人のことなど考えずに言い合いしていたことに気付き、申し訳なくなって二人はケンカを止めた。
急に気まずくなり、愛流はその子に話かける。
「あ、あんた、名前は? 私は天見愛流! それからこの馬鹿は上之宮玲菜!」
「…………!」
馬鹿と言われた玲菜はカチンとしたが、言い返すのもはしたないと考え、何も言わなかった。
尋ねられたその子は、一瞬驚いたような顔をしたが、一呼吸おいて答える。
「僕は、曽根川ひかる」
その表情は、何故か寂しそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!