飛べ!

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「…高橋…」 小林は低く静かに、だがはっきりと聞こえるように言った。 大飛は首をかしげたが、それを聞いていた背の高いもう一人はにやっとした。 (高橋) そういえば、小林と一緒に遅刻してきたのが高橋だ。 「オレはテニスコートに行くから、五時にな!」 逃げるように立ち去ったのが高橋だろう。 「たくっ」 小林は相変わらず不機嫌そうだった。 (小林…小林…) 大飛は考える。 どこかで聞いたことがある。 入学式ではないどこかで。 見たこともあるような気がする。 「……千葉大飛?」 不意に思い出したように、もう一度名前を呼ばれた。 「そっか!大飛も体育館行くんだろう?」 大飛は眉間しわを寄せた。 「わーお。変な顔」 「……」 「俺、西口晃。わかんない?」 「……?」 西口は自分を指差してにっこり笑った。 「じゃぁこっち。小林昌之。わかんない?」 今度は小林を指差した。 小林は無表情に視線を西口にやった。 体育館。 バスケ。 小林……昌之。 「小林昌之!!」 大飛は勢い良く小林の前に飛んできた。
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