飛べ!

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「入部希望者だって?」 いつの間にか呼んでいたらしい。 穏やかに微笑んだこの人は部長だろう。 誰の目から見ても、さわやかスポーツマン。 「そうです。この二人です」 部員のその返事に対して、くすっと部長は笑った。 彼の視線は小林と西口の真ん中に落とされる。 「何言ってんだ。三人だろ?」 その視線の先には。 「へ?」 温かく見守るように見たその先には。 「な、大飛」 バスケに夢中になっている大飛は呼ばれたのに気付かなかった。 それを見て部長はまた笑った。 西口が軽く大飛をこつく。 「大飛」 「何だ?」 大飛は西口を見上げた。 楽しみを邪魔されて少し不機嫌そうだ。 しかしその表情も次の瞬間には消えていた。 「久しぶり。大飛」 部長の笑顔に、大飛の顔がわかりやすいくらい輝いた。 「かずさん!!」 飛びつかんばかりの勢いで大飛はその名を呼ぶ。 「知り合いなんスか?」 その場にいたままの部員が、自分の視界に入っていなかった三人目を凝視して言った。 だってバスケをやるには、とか言う問題ではなく小さい。 「あぁ。小学校でな」 大飛は頭をぽんぽんと叩かれくすぐったそうにする。
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