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ガタン!
ガタン……ガタン……
「……ふう。キツいカーブだったけど、危機は去ったようだな」
俺は安堵のため息を吐き、かいた冷や汗を袖で拭った。
しかし、一時も油断は出来ないのが今の現状である。
キレのある急カーブに直面してしまったら、恐らく10人は助からないだろう。
……この時、俺は助かりたいという一心から、悪魔のささやきが俺の脳裏によぎった。
『イスを強奪する』
ダメだ!
それだけは人徳に反している!
多分強盗殺人にも匹敵するほどの重罪を犯すなんて……俺には……俺には……
しかし腕も相当な疲労が溜まってきている……
ど……
どうする……!!
「藤崎……どうした?もしかして腹でも下したのか?そうだったらマジ悲惨だなぁ」
!?
ま……松田!!
何をやっている!!
お前は座っていたじゃないか!!
なぜ……吊革に掴まっているんだ!?
……は!
松田が座っていた場所に、お年寄りの方が眠っている!?
ま……まさか……!!
松田……お前……!!
「お年寄りには席を譲る……常識だぜ。これで同じ土俵だな、藤崎」
松田……お前、すげぇカッコいいよ……。
俺なんかイスを奪うなんてゲスな考えを起こしていたというのに……。
俺は綺麗な笑みを浮かべる松田に隠れ、頬を伝う雫を袖で拭った。
松田……お前って……
不良じゃなかったっけ?
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