は じ ま り

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「チッ!」 残念そうな大きな男の舌打ち。 男は追いかける足を止めた。 それでも。 それを知らぬ二人は 走り続けた。 町の門が見え始めた。 君が自由になれる。 閉じた門を前に 少年は笑みを浮かべた。 少年は 崩れた壁に空いた穴に向かって走り始めた。 愛しい人の手を引いて。 ざくりっ 草を踏んだ音。 少年は雨と土の混じった匂いを吸い込んだ。 青年は見えない目で周りを見渡した。 自由に行き来する空気や風が新鮮だった。 町しか知らない青年は雨さえも嬉しげに浴びた。 そして。 繋いだ手を強く握った。 「ティオ。ありがとう。」 少年強く手を握った。 「気にしないで。さぁ…行こう!」 青年は小さく頷いた。 少年は嬉しそうに笑った。 手を繋いだまま 雨の中を二人は 風のように駆けていった。
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