ごちゃいれ

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「あたし、お母さんの手伝いしてくるね!じゃあね、おじいちゃん」 「はいよ」 台所へパタパタと駆けていく孫を見ながら、小さく手を振る。 去年よりも少しおませになった服と、伸びた身長を見て、頬がほころぶのはもう恒例行事だろう。 「……おい。」 「ん?」 ふと。声がした気がして、手元に視線を投げる。 日光に当たり、艶やかに輝くフローリングの上。 床に、 茶色の毛玉が落ちていた。 いや、違う。 視力がまた落ちたのだろうか、判別出来なかった。 リスがいた。 しかも片手にスイカの種を持ち、酷くえばりくさっている様子で。 そして、心なしか眉ねもよっているようだった。 「もっと、あいつには良心というものがないのか。」 そしてこれも恒例行事である。さして気にすることでもない。 ゆっくりと視線を戻し、庭の緑に光る露を見て感慨に浸る。 「……。スイカうまいのう。」 「聞けよ!」 このリスはそれが気に入らなかったようで、大声でまくし立てた。 なんだ、五月蠅いな。開口一番で悪口は好かんのに。 「はぁ。食いもんじゃん。食えば?」 「嫌だね。誰が食べるかこんなもの!せめて洗うための水桶を要求するよ。」 「じゃあ貰わなければいいんじゃない?」 「仕方ないだろ。押し付けてくるんだよ。」 「じゃ、諦めて、ちいちゃんのとびっきりのよだれがつき種を食べるんじゃの。いいトッピングじゃないか。」 「……ちっ。おっさんも相変わらずムカつくなぁ。あーあ。せめてジャムとかなら喜ぶんだがねぇ。」 リスは小さく肩をすくめると首を振った。 最近やけに人間らしくなってきていると感じるのは、きっと他にもいるだろう。 「…はぁ。タネは好きなのに…」 手に視線を落とすと、彼はため息をついた。
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