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ガキは掴まれたことに驚いたのか手足をバタバタさせた。
「こ、この!何をする無礼者め!離さんか!俺様を誰だと思っている!?」
完全におかしいガキだ。
女なのに俺様だとか、かなり偉そうな口調だとか、もう手に負えないと俺は悟った。
あぁ、交番はどこだったかな。
そんなことを考えているとガキは俺の方を睨みつけていた。
「さっさとその汚い手を離せ、人間。命が惜しいならな」
さっきとはうって変わって、幼いけれども冷たい声でいった。
言っていることといい、目つきといい、このしゃべり方といい普通じゃない。
「おい、ガキ。名前と住所くらいわかんだろ?交番に連れていかれたくなかったら言え」
「人間ごときに名乗る名などない」
このクソガキが……。
交番に引きずって……待てよ。
こんな真夜中に俺が交番に行くのは危険なんじゃねえか?
リーゼントでガキ連れて、さっき絡まれたヤツらをぶっ飛ばしたからTシャツには多少血がついてる。
やべぇな、俺。
悩んでいる間、ガキはずっとバタバタしていたが、突然その動きが止まった。
「どうした、トイレか?」
「来たか……」
「あん?」
ガキの目線の先を追う。
路地裏の奥の曲がり角。
こちらを見る誰かがいる。
いや、月明かりに照らされるそれは誰かではなかった。
何かがいる。
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