「366」

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 青い包装紙に赤のリボン。中には甘いチョコレート。二月十四日。今日のために用意したもの。  それを手渡して、にっこりと笑ってみせる。 「あたしね、今月誕生日なの」  言った瞬間、受け取った相手は苦笑いを浮かべた。 「ありがたみの薄れるセリフだね。せめて明日とか、もうちょっと前に言ってほしかったなあ」 「だって」  早く知って欲しかった。いつ言おうか、ずっと考えていた。  付き合い始めた去年の夏から、ずっといつ言おうか考えてた。  俯いたら、頭の上に何か置かれる。きっと、あたしのあげたチョコレート。 「――で、なにがご希望?」  顔を上げる。乗せられた箱を落とさないように両手で支えて。  そんなことしなくても、彼の手がちゃんと箱を持っていた。苦笑いだったそれが、いつもの笑顔なってる。 「女の子の憧れ」 「は? なによそれ」  太目の眉が寄せられる。おおげさに溜息をついて、「おいおい」って呆れたように呟いている。 「もうちょっと分かりやすく言ってください」  そんな困った顔をされるほど、分かり難かったかな。 「花束。バラの花を歳の数だけ」 「ああ、それ、それね。……女の子の憧れねえ」  言葉に含みを感じるけど、それは今は置いておこう。
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