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青い包装紙に赤のリボン。中には甘いチョコレート。二月十四日。今日のために用意したもの。
それを手渡して、にっこりと笑ってみせる。
「あたしね、今月誕生日なの」
言った瞬間、受け取った相手は苦笑いを浮かべた。
「ありがたみの薄れるセリフだね。せめて明日とか、もうちょっと前に言ってほしかったなあ」
「だって」
早く知って欲しかった。いつ言おうか、ずっと考えていた。
付き合い始めた去年の夏から、ずっといつ言おうか考えてた。
俯いたら、頭の上に何か置かれる。きっと、あたしのあげたチョコレート。
「――で、なにがご希望?」
顔を上げる。乗せられた箱を落とさないように両手で支えて。
そんなことしなくても、彼の手がちゃんと箱を持っていた。苦笑いだったそれが、いつもの笑顔なってる。
「女の子の憧れ」
「は? なによそれ」
太目の眉が寄せられる。おおげさに溜息をついて、「おいおい」って呆れたように呟いている。
「もうちょっと分かりやすく言ってください」
そんな困った顔をされるほど、分かり難かったかな。
「花束。バラの花を歳の数だけ」
「ああ、それ、それね。……女の子の憧れねえ」
言葉に含みを感じるけど、それは今は置いておこう。
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