第十回

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いつも同じような毎日を送ってる。だから、今日も変らない。 ――今日、何かが起こる 「おやぁ。おはよう」 家の前を掃除していた老女が、私に気付いて挨拶してきた。 小さい頃からお世話になっている人で、もうかなりのお歳だ。このところ顔を見ないから、少し心配をしていた。見れば、顔が土色に近い。 「大丈夫?」 「心配してくれるのかい。ありがとうねぇ。ちょっと風邪をこじらしちまったが、今はもうこの通り元気だよ」 確かに、背筋をピンと伸ばして立つ姿は健康的に見える。前までは杖をついて、これでもかというくらいに背を丸めていたというのに。どこか、別人に見える。気のせいだろうか。 ――この老女は危ない 「若いってのは良いねぇ。お嬢ちゃんは変わらず元気そうだ。そうだ。ちょっとお願いがあるんだけど良いかい?」 老女は機嫌が良いらしく、顔には笑みが浮かんでいる。 「なんですか?」 「親戚から荷物が届いたんだけど、重くてね」 どうやら運んで欲しいと言う事らしい。 ――行ってはいけない ――けれど、貴女は行ってしまうのだろう 病み上がり老女の頼みを断る事なんてできない。それに小さい頃から色々世話になった人だ。私は喜んで了解した。老女に促されるまま中へと進むと、不意に………………………………………… 「老女が化け物で主人公を襲うフラグが思いっきり立ってるよね」 色あせた一枚の紙を手にしながら、私はそう漏らした。 物語はこの一枚に収められていたらしいが、後半は破れて失われており、結末はわからない。けれど、大体の想像はつく。 「なんと言うか、怖くもないし面白くもないんだよね」 ノートを広げて、クルクルとシャーペンをまわす。そして、思い付くまま書きなぐる。 親しかった老女がいつの間にか別モノになって怖いと思わせるなら、《いつも》の老女とのやり取りを描写し《日常》から《非日常》へ移る瞬間を、読者にも感じてもらった方が良い。 あと、主人公の行動が素直過ぎる気がする。老女にではなく、作者に対して。 確かに、こうしなければストーリーが進まないというところもある。けれど、それで読者をとおすわけにはいかない。 主人公は作者に対して多少生意気な方が良い。「私なんでこんな行動しなきゃいけないの」くらいに。 ただ、そう考えると一枚に収まらないような…… ブツブツと自分ならこう書くと、私はノートにまとめる。
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