遠見 深夜

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 絶対に、声に出して言うつもりはサラサラ無いが、彼女は上の下、もしくは中に入る程の可愛さを持っている。  ……大人しくしていれば。  それに、オレが彼女をお嬢様などと呼び、からかっているのは、決して楽しいから。という理由だけではないのだ。  ホシノ、アスカは……冗談抜きで、本物のお嬢様だから。  家は、どうしてこの町にこんな観光名所があるんですか? と言わんばかりの大豪邸。  もちろんオレなんぞ、入れる訳がありません。セキュリティもバッチリ。  総資産は、知らないけど……とにかく、いいトコのお嬢様。  そんな素晴らしいお方が、どうしてこんな冴えない高校男子の隣で、一緒に登校しているのか?  おっと、これ以上は聞くなよ。  オレだって、まだ知らないんだ。  よーするに……才色兼備、って言うヤツなのか?  ちょっと意味が違う気がするけど、まぁ、すごい人なんだ。  ……大人しくしていれば。  別に、彼女と交わす会話は、そんなに多い訳ではない。 「毎日って、楽しい?」 「楽しいんじゃないかな」  どちらかと言えば、言葉のキャッチボールをする時間よりも、気まずいような沈黙の時間が長めだ。 「あ、今アンタ、めんどくさいって思ったでしょ?」 「……何が?」  共通する話題も、それほどある訳じゃないし。 「私と話すのがっ!」 「頭、大丈夫?」  ……だけど。  彼女といる時間は、悪くない。  この時間を、最近。  短く感じるようになって来たのは、何でなんだろう。  不思議でしょうがない。  そうして歩いていると。  視界に、見慣れた校舎が入った。
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