遠見 深夜

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 築、何年になるんだろう。  一○○年とかの、歴史ある校舎と言う訳ではなく、建てられて間もない新品の校舎という訳でもない。  人間で例えるならば……そう、三十代前半。 シワやシミが、そろそろ目立ち始めて来る頃合いだ。  ……我ながら、分かりにくい例えだな、全く。 「それじゃ、また後でね? シン。今日も、教えてねっ」 「ん? あぁ。気が向いたらな」  彼女の下駄箱とオレの下駄箱は、それなりに離れている。  その為、玄関の一つ目の扉を開けると、そこでお別れだ。 「お、し、え、て、ね?」 「わ、分かった、分かった。分かったから、足踏まないで……」  ……その言葉を聞くと、彼女はすぐに自分の靴入れ場へと向かって行った。  はぁー、恐ろしい。  なんかもう、アスカには逆らえないような気がして来た。  今日の帰りは、叱(しか)られないといいなぁ……。
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