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星空とは、美しい。
夏に、冬に輝く大三角形。数々の星座を形作る小さな光。数多の星を流し続ける、天の川。
「ねぇ。アレの名前って、何?」
美しいモノに人は惹かれる。
それは、当然の原理だろう。
「おまっ……フフッ」
「な、何よ? 気持ち悪い含み笑いなんて、しないでよね」
そんな星空に惹かれた少女の頬には、少しの朱色が混じった。
と言っても……現在の夕暮れに染まった空の中からでは、星を見つけるのは難しい事なのだが。
「あれ、金星だぞ?」
「……えっ?」
「夕方に、あんだけはっきりと見えるのは……宵の明星、だっけ? まぁそう言われる金星だけだ」
「そ、そんな事ないわよ! ちゃんと見えるんだからっ」
素直じゃないのは、もはやご愛嬌(あいきょうだろう)。
そもそもな話、まだ太陽が沈みきっていない時間帯だというのに、その中からあれだけ小さな輝きを見付けようというのだから、逆に驚きだろう。
……月なら見えてるけど。
「ちゃんと見えるって……なんだよ、金星がか?」
「シンのバカっ……!」
目の前のかわいく照れた美少女の、手提げカバンで殴り付ける攻撃。
揺らした短めの髪は、少しばかりだが、その美しさと恥ずかしさ引き立てていた。
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