クリスマス小説祭用SS

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   行事当日の何週間も前から、この通りは色とりどりの大小様々な電球によって彩られる。  そして電球の他に、どの店を見ても赤や緑、黄色やら何やらを基盤として色紙で飾り付けられていたり、雪に見せかけた白い綿で店の看板を縁取っていたり。――こうして次の行事を先取って真っ正面から今か今かと待ち構えている様は、この通りを中心に町を活気付けてくれている様にも感じる。  明日は、クリスマスイブだ。  一人の男はその通りをゆっくりと歩いていた。両の手はコートのポケットに深く沈められている。首に巻かれたマフラーが冷たく吹き抜ける風によって揺らぎ、その男は寒そうに首をすぼめた。  右ポケットの中で四角いケースの感触を確かめながら、彼女の家を目指して歩を進める。  今まで、だらしなく過ごして彼女を困らせ続けていた。だが漸く仕事を見つけ、数日前になけなしのお金で安物ながらも指輪を買った。今日はずっと待っていてくれた彼女に謝って、仕事の報告をして――。そんなことを考えていると、男は彼女の部屋に着いていた。 「はーい――あ、いらっしゃい。寒かったでしょ?」 「ああ、ありがとう。今日は特に寒いよ」  玄関に入ってドアを閉める。中は暖かく、指先がじんとした。 「ケーキ買ってあるよ。切ろうか?」 「うん。頼む。……あ、待って」  彼女が喜びそうなロマンチックな渡し方など出来ない。でも、自分らしく。 「今まで、ごめん。愛想尽かさないで待っててくれてありがとう。――これからもよろしく」  手渡した四角い指輪のケースは彼女によって開けられる。銀色に光る指輪に微かに映った彼女の表情は、今まで男が見てきた中で一番嬉しそうだった。
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