episode1 始まりと終わり

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降りしきる雪に、鉛色の空。幾度となく繰り返したか知れない日々を、今またループしている。見えているのは一面の白銀と白く染まった世界に、こぼれ落ちた雫のように染み入った赤い点。頬に触れた指が、生暖かい涙の他に滑りとしたものを拭う。  血だ。辺りを見ると、まるで水を含んだ風船がはじけたかのように赤々とした液体は雪の純白と混じって周囲をピンク色へと染めていた。少年は震える足を無理やり立たせ、フラフラとまるで折り重なるようにして倒れている死体に歩み寄り、再び膝をつく。  三体あるうちの二体はバラバラになり、すでに原形を留めていない。腕、脚、頭………焼け焦げたような黒さを思わせる三体の身体は、大きさもバラバラだ。うち二体は最も小さな身体を、まるで何かから守るかのような形で折り重なっている。少年はその死体の惨状を見て、さらに涙を溢れさせる。冷たくなった小さな手を握りしめ、声にならない声がもれる。  少年は、そっと後ろを向く。炎を纏った剣に、血のついた甲冑。それを目にした瞬間、悲しみが強い憎しみと殺意へと変わった。こみ上げる憤怒と、奪われたことの悲しみが心を乱し、少年は剣を手に取る。叫びとともに、まるで獣のように切りかかるその様はまるで狼のよう。手にした剣を振りかざした刹那。突如走った激痛とともに、 少年の世界は、『ようやく』終わりを告げた――…………
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