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ぽぽ~んと宙に舞った骨付きチキンを片手でキャッチすると、俺はすぐさま隅にある丸テーブルの下に潜り込み思わず涎を垂らした。
この地方特産のボケニワトリという鶏肉を使った料理で、皮はパリパリで香ばしく、中の肉はやや甘辛な味付けをされたもの。
一度頬張れば、パリッ! じゅわっ! んめえぇぇ! の三拍子……らしい。これを聞いておいて食べないっつー選択肢はないでしょう。
そりでぃわ……遠慮なく頂かせてもらいます……。
パリッ……じゅわっ、
「はぐ、んぐんぐ……はおわっ!! んめえええええええ、コレ!! きゃっほう」
更に宙を舞うボケニワトリ料理を発見したので俺は手を伸ばし、同じようにテーブルの横にちょこんとしゃがみ込む旅の仲間に手渡した。
「いるか? ニイナ」
「いらないわよ」
けっ、可愛げのない。
「うめーのに。ぷくは?」
「儂は少しかじらせてもらうだけでいいミャ」
じじくさい言葉を話す牛柄の体毛をしたケット・シー(猫の王様)のぷくは、前足であるはずの一つをまるで人間の手のように器用に使い、チキンを頬張った。
「おおー、コレはなんとも!」
舌も人間のそれと酷似しているらしい。変な猫。
「で――どうするのよ、この状況」
またもや飛んできた茶色の酒瓶をぐびぐび飲み干す俺。それをしげしげ眺めるニイナが困惑した表情で口を開いた。
「うーん、この状況ねぇ……」
ひっくり返ったテーブルや椅子、皿ごと飛び交う料理の数々。
来店していたのがたまたま血の気の多い連中だったのか、今や殴るわ蹴るわ噛みつくわの大乱闘。
店内は既に戦場と化していた。
――ちなみに、断じて俺のせいではない事だけは言わせてもらおう。
もう一かじり、チキンを食べた俺は、
「知らねっ」
わざわざ面倒くさい事に首は突っ込まない主義であった。
かしこいだろ。
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