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『嘘じャ……ねェだろうな』
「嘘なもんか! くっ……信じねぇんだな? 本当に信じねぇんだな!?」
『んぐッ……ふ……フン! オレ様が二個程度で心揺さぶられる――』
「なら三個だ!」
『んなッ!!!!』
一つ増えただけであからさまに動揺の色を浮かべるエーレさん。
もうこうなってくると、さっきまでのあたしが並べ立てた言葉の数々を返してほしいものだ。
ロインなんかは「威厳もクソもあったもんじゃねぇな、コイツ」とか言い出してる始末。
「三個なら……エーレ、お前も俺のこの頼み……聞いてくれるよな? いいや、聞いてくれなきゃもうお前なんて知らねぇ。俺だって……嫌なんだ。三個なんてとてもじゃねえ。だけどよ、お前が引き受けてくれるなら、血反吐が出ようが三個、必ずお前にプレゼントしようじゃないか。なぁ、カエルラ」
あ、嘘泣きしてる。イシュカさんは涙を腕でぬぐう仕種をしているが、どう見ても嘘泣きである。
「あぁ、そうだね。“もしやってくれる”なら、イシュカの三個に加えてわたしも一つ提供しようじゃないのさ。四つだよ。さぁ、どうする!」
カエルラがズイと前に出たことによってエーレさんが一瞬たじろいだ。
途端に場の空気が一変する。
鋭い攻撃の意思と並々ならぬ殺意が周辺一帯の空気を重くした。
ティアマトが、破壊するほど大地を思い切り蹴りつけ全力で疾駆した瞬間であった。
怠る事なく覇気をぶつけていたエーレさんが見せた僅かな空白の時間。
狙われたのはロイン。
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