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あたしの目はちゃんとティアマトの動きを追っていた。だけど頭が理解し、体が次の行動を起こすまでには余りにも唐突過ぎる出来事。
反応が間に合わない。ロインも大剣の柄に手をかけたばかり。
だけど――バヂィッッッ!!!!
あたし達の中で一番気を抜いた時だったはずのエーレさんだけが、あたし達の中で一番敏感に反応し、ティアマトに渾身の雷撃をぶつける。
地面すれすれを風のごときスピードで滑走していたティアマトはその強烈な光の束に巻き込まれ地面を数回転がり、手で地面を押しのけ体勢を整える。
『ぐ……ォ……さすがは……紫電竜“殿”』
『坊主ゥ、見てわからねェか? オレ様は今考え事をしてんだよォ。大人しくしてろ』
『誰が指図等受けるか』
あれだけ膨大な雷を叩きこまれたのに生きているティアマトが凄いのか、時間、距離という概念が関係ないように思える攻撃の速さをもつエーレさんが凄いのか……人の身であるあたしには到底理解できかねる両者だ。
ティアマトの反論に逆上したエーレさんは荒々しく雷をまき散らし出す。うわぁ……短気。
そんなエーレさんにイシュカさんは眉をひそめ、
「俺の魔力の事も考えろよな」
『おっと、すまねェな。手癖の悪ィガキがいるもんだからよ。……よし、引き受けてやろう。その代わり、約束は果たせよ?』
「わーてるって。破る気なんてねぇからよ」
目を瞑り、両手を広げた。
一体何を始めようと言うのだろうか。
イシュカさんの動向も気になるのだが、かといってティアマトを放っておくわけにはいかない。
あたしは精霊四体を周囲に漂わせ、警戒を強めた。
『ほゥ、精霊を……面白い人間もいるもんだな』
「集中しろよ、エーレ。今何人補足した」
『ざっと三千かな。あと五秒待て。……全員補足したぞ』
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