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「くふぅ……疲れたぁ! これ以上やると心臓焼き切っちまうかもしれないしな……しゅーりょー」
「イシュ――」
「んんんん! ごそーぞー通り、俺はあっちの大陸で一回死んで、んでもってエーレに起こされたってわけ。意外に痛いんだぜ、胸に雷落とされるのって。もっと丁寧に起こして欲しいもんだよ、ったく。あ、そーだそーだモルドワ切れただろ、ロイン。すまねぇな、心配かけちまって」
「おまっ――」
「でもまー結果無事なんだし、めでたしめでたしでしょ。逃がしたティアマトもここでちゃんと見つけたわけだし? あとはぶち倒しゃいいだけの話だ」
「こ――」
「だろ?」
「……」
「だろ?」
ニカッと明るく笑うイシュカさんに、ロインは返す言葉も見つからず口を噤(つぐ)んでそっぽを向いてしまった。
あはは、ロインはイシュカさんに弱いんだなぁ。いつも一緒にいた二人が、こうしてまた一緒にいる何気ないはずの光景。この朗らかな一場面を見ていると、今が戦い中だ、っていうのを本当に忘れてしまう。
ティアマトに未だ動きは見られない。ヤツもまた回復を図っているのだろう。
「戦った後に連続して戦うたぁ、ツイてねぇなぁ俺も」
「泣き言なんか言ってないであの野郎をさっさと倒すよ。わたしだって疲れてるんだ。早くベッドで寝たいんだよ」
肩を回して呑気な事を言うイシュカさんの額を小突いたカエルラが、左右の太ももに付けたホルスターの留め金をパチンと外して二つの銃を取り出した。
前と比べて明らかに銃の重厚感が増している。力強さが見た目からして伝わってくる。
「いいでしょっ!」
その二つの銃をチラつかせ、悪戯っぽい笑みを浮かべるカエルラ。銃の先の穴が三つもあった。三つの弾を飛ばせるようになったのだろうか。
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