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ゆっくりと男性に答えると、男性は『そっか…』と何かを考えながら答えた。
そしてしばらくして、私の体の震えが収まると、男性は私との距離を縮めて……何日も洗っていない私の髪の毛を優しく撫でてくれた。
「怖がらなくて良いよ。僕は社会福祉センターで働いている、恵介(けいすけ)君の名前は?」
「私……私は樗(おうち)」
「何歳?」
「……」
「覚えていないんだね?」
「分からない……」
「うん。無理に思い出さなくて良い、さあおいで」
恵介は私の両脇に手を入れて、軽々と立ち上がらせてくれた。
近くに停めてあった中くらいのトラックの助手席の扉を開けて、私を乗せてくれた恵介。
「シートベルトしっかり締めてね、危ないから」
「…シートベルト?」
「ああ、これだよ」
座っていた席の左側から『シューッ』と高い音を鳴らして黒いベルトが伸びてきて少しだけ驚いた。
すると私の頭に何かが蘇った……。
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