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――分かってるんッスかね?まぁ、今は何と無く分かってくれれば良しっすね。
ミフネは一つ苦笑いすると、ニコニコとご機嫌よさ気に笑うアリサの頭を撫でる。
「ミフネは何でも知っているの?」
「まぁ、大概の事は知ってるッスよ?何か知りたい事でもあるんスか?」
ミフネがそう問うとアリサは一瞬顔を曇らせたが『ううん。聞いてみただけぇ』と言う笑顔に掻き消されてしまった。
「そうッスか……もし知りたい事が出来たら、何時でも聞くと良いッスよ」
「うん!」
「ミフネ!!こんな、所に、いたの、か!!」
「キリクっすか。どうしたんすか?」
「ちょっと、一緒に、来い」
そう言うや否やミフネの腕を掴み何処かに引っ張って行く、十五歳くらいの青年――キリクはその艶やかな赤毛を汗で濡らし、息を切らしていた。
「どうしたんッスか!?」
「いいから、こいよ」
「キリク!!私も行く!!」
「アサマさん。あの病猟犬にはカザンの他にクシュを与えるんッスからね!!キリクあんまり腕引っ張らないで欲しいッス」
「アリサ~気をつけるのよ」
「分かった~おばさん」
バタバタと走り去って行く三人。それを見送る女性の傍で沈み込むアサマの姿が。
「どうしたんですか?」
「……いや、何でも‥ない」
そうは言うものの
アサマの顔は暗い。
「これは私の独り言ですが…アリサのあれは単純に親しみだと思いますよ。それにもしそうでは無いにしろ、ミフネはそう言う対象で見ないと思いますよ。多分一生。だから安心して下さいよ」
「ふん。長い独り言だな」
『サイにカザンとクシュを与えてくる』心なしか軽い足どりで猟犬の小屋へ向かうアサマ。
「――本当可愛いらしいんですから」
女性――アサマの妻ハザキはくすくす笑いながら、機嫌良く戻って来るだろうアサマの為に夕餉の仕度をし始めた。辺りは既にオレンジ色に染まっていた。
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