その村平和につき

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空気の清んだ和やかな村―ウィンド。この村は郊外から離れたかなりの山奥にある為か、長らく外からの客はいなかった。 そのため、ウィンドは外の情報を知らず農業技術も発達せず、昔からの農法で毎年採れる僅かな農作物と狩りによって、細々と暮らしていた。 数年前。そんな村を変える若者が村に訪れた。名をミフネ。ミフネは、奇妙な格好をしていた。ミフネはウィンドから遠く離れた"トシ"という所から来たそうだ。 "トシ"ではミフネの妙な格好が流行っているらしい。村のごく一般的な服をあげると喜んでいた。本人もその奇妙な服をあまり気に入って無かったらしい。 ミフネは服のお礼だと言って村の人達に、色々な農業技術を教えてくれた。おかげて村の作物収穫量は例年より驚くほど上がった。 これでもう飢えに苦しまなくて済む。村の人達は飛んで喜んだ。だが、聞くところに寄るとこの技術は"トシ"では古いそうだ。 まだまだ便利に出来るそうだが、コレ以上収穫量を上げ、なおかつ便利さを追求すると、此処らへん一帯の"生態型"を崩す事になるから駄目だと言っていた。 村の人達は"生態型"と言うものが何だかよく分から無かったのだが、ミフネがあんまりにも真剣な顔をして言うので、何も聞けなかったが、とても大切なモノだろうという事は分かった。 ミフネは今では村にとって客では無かった。村にとってミフネは恩師であり大切な仲間となっていた。
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