その村平和につき

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「で、アリサ。何か俺に用ッスか?」 ミフネがその小さな眼と同じ高さに合わせて聞く。すると、アリサは満面の笑顔で答えた。 「お母さんとお菓子作ったの。前ミフネが教えてくれた"クッキー"て言う"ラティンカ"みたいなお菓子」 「それは良かったッスね」 「ミフネ作り方教えてくれる時、お礼は出来たお菓子で良いって言ったでしょ。たがら…だけど…」 手に握っていた包みをミフネに突き出すアリサに、突然影がさした。 「覚えてくれていたッスか。有難うアリサ」 ミフネはアリサから包みを受け取ると、早速包みを解いた。ミフネの顔色が一気に悪くなる。 「………アリサ…コレ焼く時、火がまだ燻っている炭の横でどれくらい置いたッスか?」 「ミフネが造ってくれた"砂時計"で計ったから…50分」 「オイラ20分って言ったッスよね?アリサ…コレ……もはや炭ッスよ…」 「だって…生焼けになるの嫌だったんだもん……」 しゅんとしょげるアリサ。 そんなアリサを横目に、ミフネは包みの中から一つ炭の塊を取り出すと口に入れた。 「もう一頑張りッスね。味は良いッスから」 「でも苦いでしょう?ミフネに一番最初に食べてもらいたかったから、持って来ちゃったけど…」 「情報屋をなめんなッス。普通に味判るッスよ」 「そのいつも言っている"ジョーホーヤ"って何なの?ミフネ?」 こてんと小首を傾げるアリサ。 その目は純粋無垢で探究心に溢れていた。 「皆が求めているモノを手に入れる手助けをする人の事ッスよ」 「手助け?」 「クッキーに関しても、オイラは作り方の情報を教えただけッスよ。それを実際作ったのはアリサ自身ッス」 「情報って凄いんだね」 「そうッス!!情報は凄いんッス!!情報が無ければ、オイラ達生きていけないッス」 「なんで?」 "生きていけない"というところが何か引っ掛かったのだろう。再びアリサが質問してきた。 「食べ物で考えると簡単ッス。アリサは芋は食べられる事知ってるッスね?」 「うん」 「ジャガ芋の芽は食べるとどうなるッスか?」 「お腹痛くなる」 「そうッス。アリサはその事を知ってるッスけど、もし知らなかったら?」 「危ない!!」 「そういう事ッス」 「ほぇ~」
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