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「ゆる、父さん、なんだって?」
読み終えたのか、夢留由はゆっくりと顔を上げた。
困惑の滲んだ表情に、空留由と羅央も、自然と緊張する。
意を決したように、夢留由はゆっくりと口を開いた。
「よく、わかんないけど―――何か、大きなものが封印から、目覚めた…って…」
「大きな、もの?」
こくん、と頷き再び文面に目を落とす。
「詳しいことはまた後日知らせるって言ってるけど…。かなりの大物だから、覚悟はしておきなさい、って」
空気が緊迫し、沈黙が流れる。
それを破ったのは、羅央の小さな呟き。
「『覚悟』って、穏やかじゃねぇな…」
「こっちに言ってくるってことは、ここが戦場になるのかな」
「そうなったら隔離空間に引き込むだろうね」
「……苦手なんだよなぁ、それ」
ぼそりと呟いた空留由の言葉を聞き逃さなかった夢留由は、目を半眼にしてじとっと睨めつけた。
すっと手を伸ばし、頬に添える。
むぎゅぅぅぅ
「いだだだだだだ!?」
「苦手だからってそのまんまにするな!今回はくるが頼りになるかもなんだから、ちゃーんと復習しときなよ!!」
ぱっ、と頬を引っ張っていた手を離し、びしっと指を彼の顔前に突き付ける。
水属性の空留由は、能力的には、戦闘よりも結界などの防御の方に富んでいた。
しかし、活発な夢留由の分身的存在。
じっとした細かな作業より、動き回る方が性にあっていた。
むぅ、と赤くなった頬をおさえ、姉を半眼で見つめる。
夢留由は夢留由でつーんとそっぽを向いている。
そんな双子のやりとりを見ていた羅央は、思わず呟いた。
「……おまえら、ほんと息ぴったりだよなぁ」
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