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「「どこがっ!!!」」
一糸乱れぬ言動に、心の中で、ほらぴったりだ、と呟く。
口に出せばまたがっつかれそうなので、やらないが。
ふと、時計を見た夢留由はすっくと立ち上がった。
「ゆる?」
「そろそろ戻るよ。今日は麻夏も来てるし」
靴を履き、窓に足を掛けて一度振り返った。
ぴ、と羅央に指を差す。
「ジュースのお金、後で返すから」
じゃぁね、と残して彼らの視界から消えた。
行ってしまった後で、羅央は頭を掻いた。
「……別に、奢りでいーのに…」
相変わらず律儀な奴だな、と零す。
くす、と笑い、空留由は相棒の肩を叩いた。
「でも、そういうとこも、いいんだろ?」
「―――そうだな」
はにかむように笑い、彼女が居るであろう方に、優しい視線を送った。
***
翌朝。
すかー、と幸せそうに眠る夢留由に、のそっと影がかかる。
「夢留由ー」
もそっとみじろぐだけで起きそうにない彼女の上に、それがゆっくりと影を濃くしていく。
「お・き・ろ」
どすっ
「ぐえっ!?」
いきなり腹にのしかかった重圧に、乙女らしからぬ声を上げる。
涙目で腹の上の人物を睨み付ける。
「げほっ、麻夏!!」
怒りを込めて怒鳴るが麻夏は相変わらずこたえた様子はない。
とりあえず夢留由の上から退き、腰に手を当てて仁王立ちする。
「もうお昼だよ。寝すぎ」
え、と携帯のディスプレイを見ると、確かに12時を過ぎている。
昨夜部屋に戻り寝付いた頃には、結局午前3時をまわっていた。
そう考えると、まぁ、仕方ないかもしれない。
「方法は別として、起こしてくれてありがとう」
「あれ、なんか用事あんの?」
「うん、ちょーっとね」
にっこりと笑った夢留由の背後に、黒いものを見たような気がした麻夏だった。
*
―――学院生専用総合施設・四神
名の通り、四方にそれぞれ青龍、白虎、朱雀、玄武を描いたステンドグラスがはめられた建物だ。
そこの一階にある自習室の一角で、夢留由は斜に構えて座っていた。
彼女の向かいには、縮こまった弟と幼なじみ。
「―――で、何か弁明は?」
夢留由の言葉に、ふたりは、びくりと肩を跳ねさせる。
冷や汗を流すふたりの前には、薄めの本一冊分はあろうかというプリント集。
表紙には、ご丁寧に『補習者用課題プリント』とうってある。
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