第一章*桜の蛇、狛犬の覚醒

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「だいたいさぁ、どうやったら高一の夏で2なんてとれるわけ!?」 そう、このふたり…空留由と羅央は休み前のテストで壊滅的な点数をとったため、特別メニューを追加されたのだ。 そして、夢留由はそんなふたりの監督役を任ぜらたのだった。 ちなみに、夢留由は学年で5指に入る秀才だ。 「いーじゃん。どうせ暇なんでしょ?」 「そーそー。だらけるよりはいーじゃねぇか」 「……夏休みに、宿題以外の勉強したがると思う…?」 「「ごめんなさい」」 低く呟く夢留由の背後に、般若の面が見えたような気がした。 速攻で謝り、ふたりは課題に取り掛かった。  ―――リ…ィン… まったく、とぼやく夢留由の耳に、微かな音が届く。 空耳かと思ったが、それは、次第にはっきりと聞こえてきた。  ――――リィ…ン……リィン… 「……呼んでる…」 「…ゆる?」  …リィン……リィン……リィン… 応え(いらえ)、応えと呼んでいるように、鈴の音は規則的に響いている。 ふらり、と立ち上がり、夢留由は音のする方へ歩きだした。 「おい!夢留由、どうしたんだよ急に。おいって!!」  …リィン……リィン……リィン… 応え この音(ね)が聞こえし者よ わが許へ参れよ… 「…呼んでるの…。鈴の音が…誰かが…」  …リィン……リィン……リィン… 「鈴?ゆる、何言って…」 ふと、夢留由が手を伸ばす。 瞬間、ぶわりと風が吹き荒れ、空間に歪な罅が生まれる。 空留由と羅央は反射的に目を閉じ顔を覆った。 罅が大きくなり、やがてそこに冥(くら)い空洞がうまれ、紅い眼(まなこ)が見開かれる。 空間を破り、青白い腕が躍り出た。 「っゆる!!」 それは、微動だにしない夢留由の細腰に絡み付き、華奢な体を引きずり込もうとする。 手を伸ばす空留由たちの努力虚しく、彼女の体が闇に消えようとした。 ―――次の瞬間―――……
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