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「だいたいさぁ、どうやったら高一の夏で2なんてとれるわけ!?」
そう、このふたり…空留由と羅央は休み前のテストで壊滅的な点数をとったため、特別メニューを追加されたのだ。
そして、夢留由はそんなふたりの監督役を任ぜらたのだった。
ちなみに、夢留由は学年で5指に入る秀才だ。
「いーじゃん。どうせ暇なんでしょ?」
「そーそー。だらけるよりはいーじゃねぇか」
「……夏休みに、宿題以外の勉強したがると思う…?」
「「ごめんなさい」」
低く呟く夢留由の背後に、般若の面が見えたような気がした。
速攻で謝り、ふたりは課題に取り掛かった。
―――リ…ィン…
まったく、とぼやく夢留由の耳に、微かな音が届く。
空耳かと思ったが、それは、次第にはっきりと聞こえてきた。
――――リィ…ン……リィン…
「……呼んでる…」
「…ゆる?」
…リィン……リィン……リィン…
応え(いらえ)、応えと呼んでいるように、鈴の音は規則的に響いている。
ふらり、と立ち上がり、夢留由は音のする方へ歩きだした。
「おい!夢留由、どうしたんだよ急に。おいって!!」
…リィン……リィン……リィン…
応え
この音(ね)が聞こえし者よ
わが許へ参れよ…
「…呼んでるの…。鈴の音が…誰かが…」
…リィン……リィン……リィン…
「鈴?ゆる、何言って…」
ふと、夢留由が手を伸ばす。
瞬間、ぶわりと風が吹き荒れ、空間に歪な罅が生まれる。
空留由と羅央は反射的に目を閉じ顔を覆った。
罅が大きくなり、やがてそこに冥(くら)い空洞がうまれ、紅い眼(まなこ)が見開かれる。
空間を破り、青白い腕が躍り出た。
「っゆる!!」
それは、微動だにしない夢留由の細腰に絡み付き、華奢な体を引きずり込もうとする。
手を伸ばす空留由たちの努力虚しく、彼女の体が闇に消えようとした。
―――次の瞬間―――……
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