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満月が煌々と夜空を照らし、桜が淡い輝きを帯びる。
そのたもとを、二人の少年が歩いていた。
ふと、呼び声に振り返る。
『くる、らお、待って!』
小柄な影が駆け寄り、荒い呼吸を繰り返しながらしゃがみ込む。
慌てて桧皮色の髪の少年が少女に駆け寄る。
自分と似た面影の少女の背中を優しく撫でてやる。
『ゆる、何してんだよ。こんな時間に』
『わ、私も、行く…!』
少女の言葉に、少年は困惑した。
口を開こうとして、もうひとりの少年に先を越される。
『だめだ』
『らお!!』
『ゆるは体が弱いんだ。一緒にきたって足手纏いにしかならない』
黒髪の少年の言葉にぐっと押し黙る。
彼女を一別した少年は、相棒を催促する。
桧皮の少年は心配そうに少女を見やり、黒髪の少年を追った。
残された少女は、座り込んだまま手元に落ちてくる花びらを見つめていた。
ふわり、と風に流されてきた花弁に、きらりと煌めく雫が一粒落ちて弾かれた。
『…のに…っ…』
―――もう、ふたりに傷ついて欲しくないのに…!―――
淡い雨が降り注ぐ中、少女はゆっくりと顔を上げた。
前を見据える大地色の瞳には、強い想いが宿されていた。
そして
それから十年―――……
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