第一章*桜の蛇、狛犬の覚醒

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矛盾している親友―修学院麻夏(しゅうがくいんあさか)に容赦なくツッコミを入れる。 と、麻夏の後ろから、小柄な少女が顔を出す。 肩口までの黄金の髪をヘアバンドでおさえ、蒼い大きなたれ気味の瞳とは対照的に小さな鼻眼鏡をかけている。 「茜ちゃん」 西洋人のような容姿の少女の名を呼ぶ。 少女―月待茜(つきまちあかね)は、答えるように微笑んだ。 ちなみに麻夏は、稲穂の髪を腰までのばして高い位置にまとめている。少しつり気味の瞳はショコラブラウン。 背は三人の中で一番高く、所謂モデル体系をしていた。 三人並んで他愛ない話をしながら歩を進める。 ふと、再び夢留由の背に声が届く。 三人同時に振り返り、夢留由は顔を輝かせた。 三対の瞳の先に、ふたりの少年が立っていた。 「くる!羅央(らお)!」 夢留由と同じ大地の瞳と、彼女より少し濃い桧皮の髪の少年―双林寺空留由(そうりんじくるゆ)。右手に夢留由が付けているのと同じ型の、蒼いものを付けている。 前髪だけが黒く、残りが深緑の四方八方に跳ねた短髪、鋭い黒曜の瞳の長身の少年―円羅央(まどからお)だ。 空留由は夢留由の双子の弟、羅央はそのふたりの幼なじみだ。 五人が通う碧尉学院は四月に開校されたばかりの新設校で、地方からの入学者のために学生寮が設けられている。麻夏以外の四人はいずれも寮生で、夢留由と茜は同室のよしみで仲良くなったのだった。 クラスメートの麻夏は、地元組だがことあるごとに寮に泊まりにきていた。 五人で寮を目指しながら歩いていると、本日三度目の声をかけられる。 「双林寺さーん」 肩までの黒髪に少女のような容姿の少年が、ひらひらと手を振っている。 満面の笑みで。
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