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夢留由も笑って手を振り返すと、少年は機嫌良さそうに踵を返して去っていった。
「お前、あいつと知り合いなのか?」
なぜか焦ったように聞いてくる羅央を一瞥し、あの少年が消えた方を見据える。
ゆっくりと口が開かれ、出てきた言葉は――…。
「―――誰?」
どっ、と周りが一斉にずっこける。
「知らない奴に手を振り返したのかよ!!」
「つか、普通わかるでしょ!?今のは!!!」
「や、マジで誰?」
弟と幼なじみに物凄い剣幕で迫られ、思わずたじろぐ。
その時、ぽん、と羅央の肩を麻夏が叩く。
「ふたりとも、よーっく考えてみて」
「夢留由ちゃんが集会中起きてたり、まともに放送聞いてたりしたこと、あった?」
「あ―…」
「確かにねぇな」
「だから誰さ、あれ」
あまりの言われように少し不機嫌そうに問い掛ける。
その問に答えたのは空留由だった。
「鳥辺水結(とりべみずき)!高等部の生徒会会長だよ」
「私と同じクラスで結構男女関係なく慕われてるみたいだよ」
茜の補足にああ、と納得する。
そういえば、クラスの女子達が何やら騒いでたような気がしなくもないような気がする。
「でも、何でボク?顔もみたことなかったのに」
「有名なんじゃない?いろんな意味で」
賑やかな中、ふと羅央は立ち止まった。
(―――まさか、あいつ―――……)
「……いや、まさか…な…」
「羅央?」
立ち止まった幼なじみを振り返り、夢留由は首を傾げた。
羅央は自分の考えを振り払い、何でもない、と再び足を踏み出した。
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