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夜、羅央は空留由とともに寮の一階にある自販機で缶を買いに下りにきていた。
「………羅央さぁ」
「あー?」
出てきた缶を取り出し、その場で開ける。
「羅央ってさぁ」
「だからなんだよ」
「―――まだ、ゆるに告白しないの?」
ブッ!!!!!!
きたねーなぁ、とぼやく空留由の横で派手に咳き込みながら、羅央は幼なじみ兼親友を凝視した。
「ちょ…っ!!おっおま、何言って…!」
「ここまでわかりやすくて気付かないゆるもゆるだけどさ、いーかげん言わないと誰かにとられるよ?」
「……………」
―――そう、長年の想いに気付いてもらえていないどころか、下手したら男として見てもらえているかどうかさえ怪しい。
思わずため息をつきそうになった。
その時。
「ふぅん、やっぱりそーなんだ」
「っ!」
聞き覚えのある声に、ふたりは揃って振り向いた。
少女のような容姿の黒髪の少年が、にこやかに近づいてくる。
「こんばんわ。円くん、双林寺くん」
にっこりと花が綻ぶような笑顔は、しかし、どこか黒いものを背負っているように見える。
何のようかと訊ねる前に、彼―――鳥辺水結が口を開いた。
「やっぱり君も双林寺さんの事、好きなんだ」
「……何の、事だよ」
はぐらかそうとするが、水結はさらに愉快そうに笑みを深めるだけ。
苛つきを顕に睨み付けても効果は薄いらしい。
空留由がおろおろとする中、やはり水結から口を開いた。
「君がそういう態度なら、僕はそれでもいいけど」
「……何が言いたい」
「そんな怒らないでよ」
恐いな、といいつつそれでも水結は笑う。
怒りのゲージが振り切れそうな羅央をさり気なく牽制しつつ、空留由も水結から目を離さない。
やがて、そうだなぁ、と彼は顔を上げた。
「―――宣戦布告、かな」
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