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―――一方、女子寮
「ふ――――…」
深夜も廻った頃、夢留由は部屋に備え付けのシャワーを浴びていた。
一日の汗や汚れを流してさっぱりし、髪を拭きながら着替えに手を伸ばす。
―――瞬間、悪寒に似た感覚が脳を貫く。
「~~~汗流したばっかなのにっ!」
もはや日常となった感覚に舌打ちをして、部屋着から動きやすい服へと替える。
袖と丈の短いTシャツにショートパンツ、右手に数珠をつけ、窓に脚を掛けた。
ふと、一度部屋を振り返る。
暗い部屋の隅、二段ベッドの下段とその横の掛け布団が、穏やかに上下している。
「―――おやすみ。麻夏、茜ちゃん」
そして、三階の窓から姿を消した。
寮の裏手に広がる雑木林。
その気配はそこから漂っていた。
林の入り口には、すでに空留由と羅央が来ていた。
「くる!羅央!相手は?」
「今、羅央が【風読み】で探ってる」
羅央の首にかけられた革紐にさげられた翠の勾玉が、淡い色を放ち風を纏っている。
やがて、光がおさまりゆっくりと黒曜の瞳が開かれる。
「こっち来てる―――鎌鼬(カマイタチ)だ!」
瞬間、突風が三人を襲い、周りの木々が喧しく騒めきだす。
ふいに頭を下げると、今さっきまで夢留由の首があった位置に真空の刄が突き刺さる。
「夢留由!」
「平気!!」
第二波を避けつつ精神を集中する。
ぼぅ、と右手の勾玉が光を帯び始めた。
夢留由を囲むように、灼熱の円陣が空気をも焦がしていく。
炎がうねり、夢留由の右腕に蛇のように絡み付く。
「―――炎舞―――…」
紅い輝きが揺らめき、大地の瞳を煌めかす。
突進してくる黒い影に向けて手を掲げる。
"―――臨の舞…!!"
紅蓮の炎が五芒を描き、彼女の盾となって影を弾き返した。
そのまま、もんどり打つ影―――両手が鋭い鎌の巨大な鼬(イタチ)―――鎌鼬の体を、締め付ける。
肉の焼ける臭いと断末魔が林に響き渡る。
夢留由の対角線上で蒼い光が煌めいた。
「―――水時計…!」
"古刻・辰の刻―――!!"
空留由が纏っていた水が、いくつかに分かれ頭を擡げる。
彼の合図で幾匹もの水龍が鎌鼬に襲い掛かる。
ジュッと白煙がたちこもり、黒炭と化した鎌鼬は、地に伏してなおビクビクと体を震わせている。
「―――風車」
"―――イ式伍型…!!"
紅と蒼の狭間に、翠の光が溢れる。
幾つもの風の刄が、黒ずんだ骸を容赦なく切り刻んだ。
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