一章

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昼休み。 俺は弁当を前に、頭を悩ませていた。 その原因は、先程の英語の問題でもなく、弁当の箸を忘れたなんて事でもない。 一枚の手紙だ。 四時間目の英語が終わり、ようやく昼飯にありつけると思ってた。 しかし、何故か弁当袋からは手紙が先に出てきた。 この弁当は俺が作った弁当で、手紙なんて入れた覚えは当然、ない。 しかもよく見ると、今朝のHRで配られたプリント。 一体誰が、よりも、いつの間に、という疑問が先に浮かんでくる。 今日は移動教室なんてなかったし、俺が席を立ったのはトイレに行った五分間だけだ。その時は野洋もいた。 謎は一向に深まるばかりである。 普通に手紙を入れれば良いものの、わざわざ弁当袋に入れる遠慮のなさは少し誉めてしまったくらいだ。 本文も極めて単純。 「昼休み、弁当を持って屋上に来られたし、グヌヌ」 文末にはウサギの絵が描かれてて、吹き出しで繋がれている。 同じ学校の生徒から呼び出される事は何度かあったが、弁当を持って、というのは初めてなケース。 それに、ウサギはグヌヌとは笑わない。 書いた本人に会って、グヌヌと笑ってほしいもんだ。 結局、ラチがあかないので、弁当を食べる事にした。
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