一章

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「おっそーーーーい!」 勢いよく開けられたドアと同時に入室した声は、遅れて静寂も連れてきた。 元気なやつだなぁ。 と呑気に思った。 声の主は女子生徒。上靴の色から同学年と判断。 長いポニーテールを振りながら、キョロキョロと何かを探している。そして、俺を見て動きをとめた。 そのまま俺の方に寄ってくる。 …って俺!? 「ターゲット捕捉!直ちに帰還する」 携帯に話しかける。「ラジャー」と相手がいうのが聞き取れた。 元気娘は呆然としている俺の腕をつかんで、引っ張る。 「みんな待ってるから、早く早く!」 みんな待ってる? 今の状況で浮かぶものは一つしかない。 ……あの手紙の事か。 「お前が書いたのか、この手紙」 半ば引っ張られながらも、片手で例の手紙をヒラヒラさせる。 「そだよー」 と元気娘がさも嬉しそうに頷いた。 「何でこんな事を」 「来ればわかるって」 連れて来られたのは、案の定屋上。 眩い太陽に迎えられて、俺は目を細めた。 「みんな、やっくん連れてきたよ!」 そのあだ名に花丸はつけたくない。 みんな、の方を見ると、敷物を引いて弁当を食べてるグループがいた。 その中に、下半身少女もいた。
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