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もちろん、自分の意志で回ったわけではない。
誰かに後ろから押される形で回った。
運動神経はさほど悪くないと自負しているが、心の準備と、何よりこんな低さは前代未聞だ。
俺は前転寄りの前宙を頭から着地し、慣性で背中を打ちつける。
「すがっ」
変な声付きで。
一体誰が。
何て考える余裕はなく、痛みだけが体を支配する。
というか、少し意識が飛んだ。
体から痛みが剥がれていくと、ようやく声が耳に入ってくる。
野洋の野郎かと思ったが、その声は野洋とは違った。
「昨日の…下半身」
そこにいたのは昨日デパートで下敷きにされていた少女の下半身だった。
逆か。
下半身の少女だった。
少女は仕切りに謝ってる。
どうやら、この少女が俺を押したらしい。
どうにも故意的には思えないが。
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