一章

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「也琴、大丈夫か」 野洋が寄ってくる。 野洋に手を借りて、俺は立ち上がった。 急に立ったせいか、頭を打ったせいか、若干フラフラする。 「ごめんなさい、ごめんなさい」 まだ下半身少女は謝っていた。 手で頭を押さえながら、取り敢えず辺りを見渡す。 言うほど人集りはなかった。 その事に安堵する。入学早々、注目を集めたくなかったからだ。 次に下半身少女をみる。 昨日と変わらないあどけない顔が、目に涙を貯めて、俺を見ていた。 「あの……」 また謝りそうだったから、先手を打つ事にした。 「そんなに謝らなくても大丈夫だから。それよか、何故俺が前代未聞の前宙を披露したのか、説明してほしい」 すると下半身少女は申し訳なさそうな顔をして、小さく言った。 「昨日のお礼したかったんだけど、名前わからなかったから……」 つまり。 玄関で俺に遭遇→お礼がしたいが名前がわからない→オロオロする→野洋がそれに気づく→野洋が俺を叩く→俺、前宙。 「お前のせいかぁ!」
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