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「也琴、大丈夫か」
野洋が寄ってくる。
野洋に手を借りて、俺は立ち上がった。
急に立ったせいか、頭を打ったせいか、若干フラフラする。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
まだ下半身少女は謝っていた。
手で頭を押さえながら、取り敢えず辺りを見渡す。
言うほど人集りはなかった。
その事に安堵する。入学早々、注目を集めたくなかったからだ。
次に下半身少女をみる。
昨日と変わらないあどけない顔が、目に涙を貯めて、俺を見ていた。
「あの……」
また謝りそうだったから、先手を打つ事にした。
「そんなに謝らなくても大丈夫だから。それよか、何故俺が前代未聞の前宙を披露したのか、説明してほしい」
すると下半身少女は申し訳なさそうな顔をして、小さく言った。
「昨日のお礼したかったんだけど、名前わからなかったから……」
つまり。
玄関で俺に遭遇→お礼がしたいが名前がわからない→オロオロする→野洋がそれに気づく→野洋が俺を叩く→俺、前宙。
「お前のせいかぁ!」
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