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ズドン!!と重い轟音が周囲に鳴り響く。同時に、魔物の頭が消し飛んだ。
吹き飛んだではない、消し飛んだのだ。血も肉も、生き物であったことを証明する残骸を全て消滅させた。
一瞬の、出来事だった。
「さて、と」
そいつは未だ煙を上げるライフルを数回振って銃身を冷やし再び背中に担いだ。そしてくるりと振り返って俺のほうに歩み寄る。
「危ないところだったね」
「あ、あぁ」
どうやらあまりの出来事に思ったより付いていけていないらしい。俺の返事は間抜けなものになってしまった。だがそれに対しそいつはくすくすと笑った。失礼な奴だ。
「そうだ、お兄さん。助けてあげた報酬に一つお願いがあるんだけど」
「……報酬?」
一体どれだけの大金を請求されるのだろうか。それとも一生奴隷扱いを強制されるのか、そんな不安が俺の脳裏を掠めたとき、ドスンと鈍い音がした。見ると、先ほどまで威勢よく動きまわっていた奴が突然地面に倒れた。
何事か、もしかしたらどこかケガでもしているのだろうかと心配していると、ギュゥと先ほどの俺の返事よりも間抜けな音が耳まで届く。
「食べ物を恵んでくれないかな、お腹が減ったんだ」
そう言って、そいつは苦笑した。
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