旅立ち

5/5
前へ
/9ページ
次へ
   僕は、羊を連れ、幾日も経つというのに、幸せは、見つからなかった。    「はぁ、幸せそうにしてる人が、沢山いると思ってたのに、いないものだ」       ラインハルトは、こんなに落ち込んだ事は、初めてだった。     十字路に座り、ぶつぶつと独り言を言い、何度もため息を吐いた。      その時、身なりの良い紳士が、ラインハルトの呟きを聞いた。      「フランツ、誰を見てるのさ。まさか、あいつ?ボロを着た若者じゃないか」      同じく、身なりの良い少年が、ラインハルトを見ている、紳士に話し掛けた。     「アンディ、彼を見てご覧。あの青年の、がっかりした顔を」      「それが何か?」      少年は、紳士に、なんだか、分からないと言った。     「あの青年を、ずっと、見ていたけれど、人に親切な心優しい子だったよ。何とかしてやりたいものだ」     
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加