序章

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まだ暑さの残る9月の夜10時。 二人組の男女が千葉県の某国際空港からでてきた。 一人は女…というよりも少女という表現が正しいだろう。 長い金糸に身なりの良い服を着た小学生のような身長と体つき。 外見を見ればかなりの美少女だが、表情からは何の感情も読み取れず、その澄んだ月色の瞳はつまらなそうに周囲を見ていた。 もう一人は、左手にアタッシュケースを持った長身の見るからに怪しい男だった。 そのまま夜闇に溶けてしまいそうな黒いロングコートに暗い色のジーンズ、黒い帽子を目深にかぶっているのと暗さも相まって顔ほとんど見えない。 「やっと到着ですね。」 そんな明らかに税関で職務質問されそうな殺し屋スタイルの男が優しげな声でそう少女に話しかける。 「…………。」 少女からの返答は無い。 だが慣れているのか、男も特に返事を待つわけでもなく、「まずはテツに連絡ですね……」と呟きながら歩いていき、やがて二人は夜闇に消えていった……。
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