0人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんな事・いわないでよ。」
彼女は目にいっぱいの涙をためて僕を叩いた掌を握り締めた。
「あたしは・好きなのに。」
「皆、君が好きだったのに。」
「好きの種類は違っても、好きだったのに」
僕の目は、パタパタと落ちる彼女の涙を受けたように、見る間に滲んでいった。
その言葉は、今までの彼女・全員の言葉みたいだった。
「しょうがないじゃないか。」
だって・
「僕は、置いてかれるしかないんだ。」
フジノヤマイだから・
「皆、僕の側にいるといって、居なくなったじゃないか。」
僕はぼやける視界を必死で堪えていた。
「だって、」
僕は口ごもる。
もう置いて行かれたくない。
あの、扉をくぐり、出ていく彼女の背中など、見たくない。
「だから、」
期待しない。
好かれてるなんて思いたくない。
「でも、」
最初のコメントを投稿しよう!