0人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも……でも、あたしは好きなの!置いていきたくないの!一緒に居たいの!君の傍に居たい!」
彼女の声は悲鳴に似ていた。
「それの何がいけないんだよぉ……」
彼女はその場に座り込むと、大声で泣いた。
マンガみたいな量の涙が溢れていた。天井を見上げて大きな口を開けて。
その声はこの小さな白い部屋中に響いて、彼女の涙の色みたいに、部屋がきれいな水色に染まった気がした。
僕はどうしたらよいのか判らなくて、そっとベッドから足を下ろす。
「ぅあぁぁぁぁぁっ……ぁあぁぁぁぁぁんっ!」
彼女の声は僕の耳に響いて、僕はその細い肩に触れた。
それだけで、彼女はまるで、母親を見つけた迷子みたいに、僕にしがみつく。
彼女の首筋から、陽の匂いがしていた。
「ひぐぅぅっ」
女の子とは思えない声で彼女は泣く。
僕はその、涙と鼻水だらけの顔を、自分の肩に抱いた。
細い、細い背中に、腕を回す。
「僕・はただ、彼女・に、彼女に・傍に居て欲しかっただけなんだ。彼女がそばにいてくれたらそれで、よかったんだ。
その後、一人きりになったって、よかったんだ」
堪えきれなくなった涙は、コロコロと流れて、彼女の肩に染みた。
最初のコメントを投稿しよう!