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「えーと…もしよかったら、わたしと‥メール交換してくれませんかっと」
自室のベッドの上に俯せて、足を交互にゆらゆらと揺らしながらメールを打つ。
ちゃんと絵文字も、忘れずに。
こんなもんかと一人頷きながら作成した文章を再度確認して、送信ボタンを押した。
「豊次ー翔太ーご飯できたから食べなさ~い」
同時に一階から母親に呼ばれて、もうそんな時間かと画面をみれば、時計は19時41分を表示していた。
おー、と隣の部屋から弟が返事をするのを聞いてから、パチリと携帯を折りたたみ、ベッドへ投げて自分も階段をおりた。
メールの文中に“私”なんて使っているが、呼ばれた名前でもわかるように女ではないし、別にソッチの趣味があるわけではない。
末広豊次(すえひろとよじ)
高校二年。
少し古風な名前だが、それとは反対に、見た目は今時の男の子。
明るい髪色に、少し長めのウルフカットは雑誌の人気読者モデルを真似たものだ。
翔太、と呼ばれたのは中三の弟で、今は留守にしているが、もう一人姉がいる。
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