11人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
鉛色の雲から舞落ちる雨は無情に降り続ける。
一つ一つの雨粒は地面に降り注ぎ水たまりを作り出し
水たまりに降り注ぐ粒は一つ一つが大小様々な波紋を作り出す。
漆黒の空から降り注ぐ粒とは別の青い粒は波紋と共に、水たまりを青く染める。
水溜まりを青く染めるのは、かつて黄金に輝いていた甲冑を纏いし人物。
甲冑は返り血に塗れ、血糊が付着した直刃の剣を携えし人物は目の前に広がる異形の軍勢を見つめ、ため息をついていた。
「『奴』を殺せばすべてが終わる……」
声は澄んだ物だった。
恐らく甲冑の中の人物は女性なのだろう。
しかし甲冑に隠れその顔までは確認することができない。
女性はふと後ろを振り返った。
そこには今まで自らが切り裂いてきた異形の怪物の亡骸が無数に転がっていた。
「私は多くの血に汚れてきた……早く……自由になりたい……」
そう呟くと女性は血糊でなまくらになった刃を握りしめ、異形の集団の中へ突っこんでいった。
最初のコメントを投稿しよう!