case2 事件発生

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『navi:以上でアバター操作のチュートリアルは終了します』  長い、いや一時間ぐらい教えられた。  さっきまでオレはゼノンの使い方を教わっていた。アバターの歩かせ方、ジャンプに視線変更、ネチケット、音声入力と文字入力の切り替え方やなど…きりがない。 「てか、さっきの壁にめり込んで動けなくなるってなんだよ…オンラインでもぶつかる程度だぞ?」 『navi:ネットワーク内では壁や地面という概念は本来存在しませんが、サイト移動時にまれにアドレスのズレが発生することがあります。よく通信が重くなられたことは?』 「あるけど、ただ混んでて表示や読み込みに時間がかかるだけだろ?」 『navi:はい、ですがデータが詰まりすぎて動きにくい状態という意味でもあります』 「というと?」 『navi:ユーザー様は満員電車に乗られた経験は?』  なるほど、そういうことか? 「あるし、言いたいことがわかった。ようは『混んでるところからうまく出る方法』なんだな」 『navi:飲み込みが早く説明が省略できてしまいました』  そう、『navi』の例えはわかりやすい。満員電車や改札なんて入口や出口で詰まりやすくなる。つまり、壁にはまるのはデータの隙間にはまることで、満員電車に無理やり乗り込むのと同じように動きがとれなくなる。  ただ、常に固定されているわけではない。データは常に出たり入ったり計算したり修正したりと忙しい。  修正する隙に出るという方法だったのだが。…これ、いるのか?いや、知らなくて修理に出すよりましだけど。 「しかし、『壁に向かって歩いてください』なんて普通やるか?」 『navi:何事も経験された方がよろしいかと』  この『navi』…作った人間を一度見てみたい、ぶん殴ってスッキリ出来ればいいが。 「んじゃチャットをログオンにしても大丈夫だよな?」 『navi:はい、問題ありません。またわからないことがあったらお呼びください。「ナビ」と呼べば直ぐに対応します』
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