case2 事件発生

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 とりあえず長いチュートリアルと『navi』との会話は終わり、少しネットワークの中の街を歩く。  時間は午後九時、でかい時計台が知らせている。実際はモニターの左下に小さくある、でもやはり初めての別世界というか…たくさん見ておきたい。  ただ、ここで違和感があった。  誰からも声がかからない。いや、ユーザーが見つからない。  実際この時間は利用者が何人もいて、知り合いも何人かいる。  前のパソコンでも、チャットがないなんてことはほとんどない。  一応接続を確認しても、つながっている。  一応歩いている人に聞いてみるか。 「すみません」  そういいながら、右手で画面に映る人を触る。モーションキャプチャーだから問題は広めに動かさないと気づかないが。  相手が振り返る、オレは質問しようとしたら。 『ようこそ、ネットシティオオヒガシへ』 …これ、飾りのCPUだった。  前のパソコンでは画面上の街を歩く人を見てるだけだった。たまに、人が少ないと画面が寂しいと言う理由で、ネットシティ管理者が飾りを作った噂を聞いていたが。  こんな時にガッカリさせる。パソコン初心者状態をまたやらされて恥ずかしいやら、何というか。  …あれ?でも、待て。誰かいるならこの行為を笑う『荒らし』系の奴がいるはず。 「ナビ」 『navi:はい』 「なんで人がいない」 『navi:いないわけではありません。極端に少ない人数でこのシティサーバーが使われているだけです』  そんなバカな、深夜なら寝落ちとか寝てるとかで納得できる。今の時間は午後十時半を過ぎ、普通ならアクセスが集中して『しばらくお待ちください』なんて画面が当たり前にでる。出なくても動作が鈍い、遅い、重い。  そう、ポンコツだったパソコンで慣れていても、いきなり新しいもので快適になっても、おかしいのだ。 『:そこの少年、そこで何している』  突然画面とヘッドホンから全く同じ声と文字が流れた。  首を振り、その声の主を探そうとしたがどこにもいない。上下左右に首を動かすが見えない、しかし、さっきのCPUではなくはっきりとそれが『人間』が使っているものであるのがわかった。 『:聞こえないのか、アスタリスクの少年』 「アスタリスク?」 『navi:アスタリスクとは*のことです。アバターの細かい変更がなされていないため、今のアバターのお洋服についています』  …そういえば、今まで自分がどんな姿か見てなかったな。
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