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今の自分のアバターがどんなのか、改めて見ようとした。
「…これ、かっこいいなぁ」
そう、自分のアバターが初期状態とはいえかっこよくなっていた。
コンクリートの街に立つアバターの服装はライダージャケット、レザーグローブが両手にあって、頭にはヘッドバンド。ただジャケットの背中には四角形に囲まれたアスタリスク。
ゼッケンにも見えるが、どうやらアルファベットを使ったマークらしいことが見える。
ただ、アスタリスクでなくて砂時計のようにも見えるのはオレだけだろうか。
『:アスタリスクの少年、そこから離れろ。アバターが破壊されるぞ』
やっぱりオレに直接言っているようだ。しかも、離れろってどこから?
「どこから離れるんですか?」
『:だーっ、ログアウトしろ、危ないから』
『navi:ログアウト処理が現在出来ません』
「へ?」
『:今の誰だ?』
今、おかしい事が起きた。
『navi』が呼んでもないのに出てきたこと。
ログアウトが出来ないこと。
『navi』の声が相手に見えたこと。
そう、下手すれば今ヤバいのは…。
『:少年!前に走れ!』
言われたまま、左手をたくさん振って前に逃げる。アバターは見事走る速度になったが、その直後。
ピィィィィガァァァァ!
頭に響く機械音がした。昔の電話で紙が流れるやつがあったっけ。社会見学でそれを初めて見た時に似た音を聞いたが、こんなに気持ち悪い音はない。
「…うぐっ」
ヤバい吐くかも、てか新しいパソコンに吐きそうになる。ネット酔いなんて初めてだ。
ピィィィィガァァァァ…
……ザァァァァァッ…
あれ?急に砂嵐の音?あの音が止んで助かったが、どうして急に?
『navi:生命異常を感知し音響変換しました。危険な音でしたので緊急の処理です』
「無音じゃだめなのか」
『navi:ユーザー様のデータと生命の危機です、無音だと危機感がなくなりかえって危険と』
待て、データ?
今の音が何か気になり後ろに視線を向ける。アバター越しのそれは悲惨だった。
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