case1 始まり

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 オレは軽く返事する、おふくろの小言も説教も今は聞く気がない。 「繋、あんたに荷物が届いてるから。ちゃんとしなさいね。じゃ、母さんパート行くから」 といつものように慌ただしく、おふくろは玄関のドアを勢いよく閉めた。…って待て、荷物ってなんだ?まずは、それがどこにあるかきくために携帯をかけた。引き止めてまでやるとパートに遅れるだろうから、ただ…かけて直ぐになんで家の中で『かえるのうた』の着メロが輪唱してるんだ!  慌てて忘れていったのはよくわかった。オレとオヤジの飯に時間かかっていたのもわかった。…理解出来なかったのは、携帯が冷蔵庫にひっついているフックにぶら下がって目立つはずなのに忘れていったことだ。 「…はぁ」 ため息。いや、いつもの事だ。早々に飯を平らげ、オレはオレ宛の荷物を探す。  ただ、オレ自身届いた荷物に心当たりがない。通販の趣味もないし、送るほど遠くに親戚も転校生もいない。 「…いや、まさかな」  一瞬頭によぎったのは、家電品の懸賞だった。今の流行はネットでパソコン、だがただのネットでもパソコンでもない。  今の22世紀、ネットはほとんどもう一つの世界と化している。自分の分身が街を歩く、さながらRPGゲーム。実在に手には入るものが店員と相談しながら買えるし、友人とも面と向かって話せる。って言っても分身だが。その分身にも、きちんと戸籍がある。匿名希望も出きるが、それでも個性的な分身が多い。逆に連帯感で簡単にお揃いも出きるらしい。ネットで何かお祭りする場合やりやすいが…下手すりゃ怖い目に遭うので避けている。  そのネットライフを楽しむのに必要なのはパソコン。最新のはヘッドホン型バーチャルスクリーンで、メガネのようにかける。で、首を左右に振るとアバターって分身の事だが、オレの動きとアバターの視線が一体化して動くモーションプレイヤー付き。今でもキーボード型は使われているが、よりネットを楽しむために様々なオプションがある。が、キリがない。
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